
放課後の校庭にランドセルを二つ置けば、そこはもう大きな大会のゴールになる。ボールを持った子が少し後ろへ下がり、まわりのみんなが息を止める中、ゴールの前に立ったディブ・マルティネス(Dibu Martínez)が、にやりと笑いながらグローブをパンパンと鳴らしたらどうなるだろう。シュートを打つはずの子は右を見て、左を見て、もう一度ディブの顔を見てしまうかもしれない。ディブはまだ一歩も跳んでいないのに、相手の頭の中ではすでに小さな作戦会議が始まっている。そんな不思議な存在感を持つアルゼンチン代表のゴールキーパーを、自由な色と物語で楽しめるのが、この2026年ワールドカップ選手ステッカーぬりえだ。
印刷したばかりの絵には、試合の場所も時間もまだ決まっていない。大きなスタジアムで行われる世界一をかけた試合かもしれないし、夕方の公園で始まった友達同士の勝負かもしれない。雨上がりの校庭で、水たまりをよけながらボールを追いかけている場面も似合う。絵を塗る子が決めれば、月の上や雲の国、海の底にあるサッカー場だって立派な試合会場になる。白い背景は何もない場所ではなく、これから好きなものを描き足せる大きな遊び場なのである。
まずはディブのグローブをじっくり見てみよう。ゴールキーパーにとってグローブは、ボールを止めるための大切な道具であり、ぬりえでは思いきり飾れる楽しい場所でもある。右手は赤、左手は青にしてもよいし、指を一本ずつ違う色に塗っても面白い。親指は強いシュートを止める力、ひとさし指はボールの方向を見抜く力、小指には運の悪そうなボールをそっと外へ押し出す力があると考えると、ただ色を塗るだけでなく、魔法の道具を作っているような気分になれる。
手のひらには小さな星やハート、稲妻、ライオンなどを描き加えられる。自分の名前の最初の文字を入れて、ディブ専用の新しいグローブをデザインするのもよい。誰にも意味を教えない秘密のマークにすれば、試合前にディブがそれを見て勇気を出すという物語も作れる。家族を思い出すハート、あきらめない気持ちを表す太陽、すばやく動くためのツバメなど、選ぶ絵によってグローブの性格まで変わってくる。
ユニフォームには正しい色が一つだけあるわけではない。アルゼンチンらしい雰囲気にしたいときは、水色や白、金色を使うと明るく仕上がる。未来のワールドカップを想像するなら、深い紫のシャツに銀色のそでを合わせても格好よい。オレンジ色のパンツ、緑色のソックス、左右で色の違うスパイクも楽しい。星、ボール、ギザギザの線、雲、手のひらの模様などを自由に描けば、世界に一着しかないゴールキーパーユニフォームが完成する。
色鉛筆を使うと、顔や髪、ひげ、服のしわを少しずつ丁寧に塗れる。クレヨンならシャツや芝生のような広い場所を元気よく埋められる。水性ペンは国旗や文字、スコアボードをはっきり目立たせたいときに便利で、絵の具を使えば夜空やスタジアムの光にやわらかな変化をつけられる。折り紙を小さく切って紙吹雪として貼ったり、金色の紙でトロフィーを作ったりすると、印刷したぬりえが工作作品のように変身する。
線から色が少しはみ出しても、そこで手を止める必要はない。長く伸びた線は、ものすごい速さで飛んでいくボールの道にできる。ペンの小さなしみは、ユニフォームについた泥や、観客席から飛んできた紙吹雪に変えられる。間違えて描いた丸は、遠くに置かれたカメラや予備のボールになるかもしれない。絵の中では、うまくいかなかった線ほど意外な役をもらえることがある。
ディブの後ろには、どんなゴールを描こうか。定規を使ってまっすぐなネットを描いてもよいし、風に揺れているような曲線にしてもよい。ネットの小さなマス目には、こっそり動物やマークを隠せる。すみにはクモが座っていて、ボールが飛んでくるのを待っている。しかしディブが全部止めてしまうので、なかなかボールと友達になれない。クロスバーには小鳥が一羽とまっていて、シュートが高く飛んでくるたびにびっくりして羽を広げる。
ゴールポストの近くには水のボトルやタオル、予備のボールを描き足せる。アルゼンチンのユニフォームを着た小さなぬいぐるみを置けば、ディブを応援する幸運のお守りになる。ベンチのそばにおにぎりの入った箱を描き、休憩時間に食べるという日本らしい楽しい設定を加えてもよい。もちろん本当の大きな試合中に食べるわけではないが、子どもが作る物語なら、鮭のおにぎりがゴールキーパーに不思議な力をくれることもある。
観客席を描き始めると、静かだったページが急ににぎやかになる。アルゼンチンの旗を振っている人、緊張してマフラーで目を隠している人、まだシュートも打たれていないのに立ち上がって喜んでいる人がいる。「ディブ、止めて」と書かれた応援ボードや、「本日のゴールはお休みです」というおかしな看板も似合う。観客の顔を全部同じにせず、口を大きく開けている人、両手を合わせて祈っている人、ポップコーンを落としそうになっている人などを描くと、試合の緊張感が伝わってくる。
スコアボードには好きな数字を書ける。試合終了まで残り数秒で同点なら、次のシュートがとても大切になる。十対九のような驚くほど点の多い試合でもよいし、ゼロ対ゼロのまま誰もゴールを決められない試合でもよい。チーム名も自由で、アルゼンチン対ロボット選抜、ディブチーム対恐竜クラブなど、実際には見られない対戦を作ることができる。
ディブはペナルティーキックの前に、ただ静かに立って待つタイプのゴールキーパーではない。ゴールラインの上で動き、グローブを鳴らし、相手に声をかけ、肩を少し揺らして注意を引く。相手の選手はボールだけを見ようとしても、ついディブの動きが気になってしまう。これは体の大きさや反射神経だけでなく、相手が何を考えているのかを想像する勝負でもある。
ぬりえでは、この場面をかわいい漫画に変えられる。ディブの肩の近くに音符を描けば、自分だけに聞こえる音楽に合わせて動いているように見える。キッカーの頭の上には三つの考えのふきだしを描ける。一つには左の角、次には右の角、もう一つにはゴールの真ん中を入れる。考えれば考えるほど迷ってしまい、最後には「どこへ蹴るんだっけ」と困った顔になるかもしれない。
サッカーボールにも顔を描いてみよう。大きな目と小さな口をつけるだけで、ボールが一人の登場人物になる。シュートの前は少し緊張し、ディブにキャッチされた後は驚いた顔をする。ポストの外へ飛んでいったときは、恥ずかしそうにほおを赤くしてもよい。ゴールへ入りたいボールと、ディブのグローブで休みたいボールが話し合っているというお話も作れる。
紙の空いている場所を四つに分ければ、短いサッカー漫画も完成する。一つ目のコマでは審判がペナルティースポットを指す。二つ目ではディブがグローブを直している。三つ目では相手選手が走り始める。そして四つ目には一番面白い結果を描く。ボールが両手の中へすっぽり収まる、ポストに当たって跳ね返る、空高く飛んでカメラマンの帽子を落とすなど、何が起きてもよい。「バン」「ビュン」「キャッチ」といった文字を入れると、紙の上から音が聞こえてきそうになる。
ディブという愛称には、絵にまつわる面白い由来がある。本名はエミリアーノ・マルティネス(Emiliano Martínez)。子どものころ、明るい色の髪やそばかすのある顔が、アルゼンチンで放送されていた、実写とアニメーションを組み合わせた番組の登場人物に似ていると言われた。仲間たちは彼をディブと呼び始め、その名前は練習場や更衣室、やがて世界中の大きなスタジアムへとついていった。
絵のキャラクターに似ていたことから愛称がついた少年が、今では子どもたちが塗ったり描いたりできる選手ステッカーの主人公になっている。それを考えると、このぬりえはさらに楽しくなる。ページの半分を本物らしいサッカー場にして、もう半分をアニメの世界にすることもできる。本物の側には審判、カメラ、観客を置き、アニメの側には話すスパイク、笑うボール、目のついたゴールを描く。ディブの横には、小さな体に大きすぎるグローブをつけたミニゴールキーパーを立たせてもよい。
現在のディブを見ると、昔から有名な試合に出続けていたように感じるかもしれない。しかしエミリアーノ・マルティネスは、長い間、自分の大きな出番を待っていた。若いころにアルゼンチンを離れてヨーロッパへ渡ったものの、すぐにチームの正ゴールキーパーになれたわけではない。別のクラブへ移ったり、期限付きでほかのチームに加わったりしながら、ベンチから試合を見る時間も経験した。
ほかのゴールキーパーが試合に出ている日も、ディブは高いボールをつかむ練習、ゴールライン上を素早く動く練習、相手より先に前へ飛び出す練習を続けた。大きなチャンスがいつ来るのかは、本人にも分からなかった。それでも準備をやめず、出番が来たときに困らないよう、自分を少しずつ強くしていった。
やがて本当に試合へ出る機会が増えると、それまで人に見られていなかった練習の成果が表れた。難しいシュートを止め、チームを助け、アルゼンチン代表でも大切な役割を任されるようになった。急に強くなったのではなく、長い時間をかけて積み重ねていた力が、ようやく多くの人の目に見えるようになったのである。
この物語は、ぬりえを楽しむときにも少し似ている。全部を一度に完成させなくてもよい。今日はグローブとユニフォームだけ塗り、次の日に観客席や空を描くこともできる。顔や髪はゆっくり、芝生は大きく手を動かすなど、場所によって塗り方を変えられる。途中で休むと、次に見たとき「ここに犬を描こう」「雨を降らせよう」と、新しいアイデアが浮かぶかもしれない。
ディブは体の練習だけでなく、気持ちを落ち着かせる方法も学んできた。大きな試合では、スタジアムの音や大勢の視線、たった一本のシュートで結果が変わる緊張がある。自信がありそうに見える選手でも、不安になったり考えすぎたりすることはある。エミリアーノは専門家の助けを借りながら、自分の気持ちを整理し、重要な場面で集中する方法を身につけていった。
子どもたちにも似た経験がある。教室で発表するとき、初めての習い事へ行くとき、運動会の競技が始まる前には、胸がどきどきすることがある。勇気があるというのは、まったく怖くならないことではない。緊張していても少しずつ挑戦し、困ったときには信頼できる人に話し、ゆっくり息をすることも立派な強さになる。
絵の中で、ディブが心を落ち着けるための秘密の習慣を考えてみよう。試合前に左右のゴールポストへ一回ずつ触れ、グローブを三回鳴らすかもしれない。手首に描いた小さな星を見て、家族や練習の日々を思い出すかもしれない。その印は太陽、トラ、ゾウ、好きな食べ物など何でもよい。意味を知っているのは、ディブと絵を描いた子だけである。
ディブの有名なプレーの一つは、2022年ワールドカップ決勝のとても重要な時間に生まれた。フランスの選手がゴールの近くから強いシュートを放ち、多くの人がボールはネットへ入ると思った。ディブは早く倒れすぎず、ぎりぎりまで立ったまま相手を見て、体を大きく広げ、伸ばした足でボールを止めた。ほんの短い出来事だったが、多くのサッカーファンの記憶に残るプレーになった。
その場面をそのまま写す必要はない。ボールの後ろに長い線を描き、ロケットのような速さを表してもよい。シュートした選手のスパイクから芝が飛び、アルゼンチンの仲間たちは両手を上げてディブへ走ってくる。ゴールの後ろにいるカメラマンはカメラを落としそうになり、クロスバーの小鳥は驚いて飛び立つ。
空想の試合なら、シュートする相手を三本足のロボットにできる。サッカーシューズを履いた恐竜、氷の上を滑るペンギン、大きな翼を持つドラゴンも参加できる。ボールは氷、光、カラフルなゼリー、星の粉などで作られていてもよい。ゴールは海賊船の上、海の底、月の表面など、好きな場所へ移せる。
月ではボールがゆっくり飛ぶので、ディブは一回転してからグローブを直し、それでも余裕を持ってキャッチできる。海賊船の上では、二本のマストの間にネットを張り、審判の肩にはおしゃべりなオウムがとまっている。海の底では選手たちがスパイクの代わりに足ひれをつけ、小さな魚たちがネットの向こうから試合を見ている。
本物のサッカーらしい景色が好きなら、夜のスタジアムを描こう。空を濃い青で塗り、大きな照明を白く輝かせる。観客席には小さな色の点をたくさん置けば、大勢の人が集まっているように見える。ゴールの横には水のボトル、ネットの後ろにはタオルとカメラがある。スコアボードは最後の数秒を示し、ディブは少しひざを曲げて次のシュートを待っている。
チームメートもページへ登場できる。ディブはリオネル・メッシやアルゼンチン代表の仲間たちと、たくさんの大切な試合を経験してきた。ゴールキーパーが一本のシュートを止めることは、自分の活躍だけを守ることではない。走り、パスをつなぎ、ボールを奪い返してきた仲間全員の努力を守ることでもある。
メッシがディブへ走ってくる様子や、ほかの選手が集まって抱き合う場面を描ける。みんなでトロフィーを持ち上げてもよい。ユニフォームの背中には本物の選手名ではなく、友達、きょうだい、いとこ、クラスメートの名前を入れられる。それぞれに得意なことを決め、いちばん速く走る選手、コーナーキックが上手な選手、更衣室でみんなを笑わせる選手を作ると、自分だけのチームになる。
ピッチの外にいるエミリアーノ・マルティネスには、家族を大切にし、仲間と冗談を言う明るい一面もある。ペナルティーの場面で相手を緊張させようとするゴールキーパーも、試合が終われば家族を思い、友達と笑い、静かな時間を楽しむ。グローブにハートを描いたり、そでに大切な人の名前の一文字を入れたりすれば、そのやさしい部分も絵の中に表せる。
完成したぬりえは、サッカーが好きな人へのプレゼントにもなる。練習へ連れて行ってくれる家族、一緒に公園でボールを蹴る友達、テレビで試合を見るときに隣で応援してくれる人へ渡せる。自分で選んだ色や、小さく描き足したマークがあるから、同じ線画を印刷しても、ほかにはない贈り物になる。
雨の日や、サッカーをテーマにした誕生日会、家族で試合を見る前の時間にも、この大マルティネスのぬりえを楽しめる。何枚か印刷すれば、一人ずつ違うゴールキーパーを作れる。一枚はアルゼンチンらしい色、もう一枚は銀色のグローブをつけた宇宙の守護神、別の一枚は巨大な積み木で作られたゴールを守るディブになる。
できあがった作品を並べると、同じ絵から始まったとは思えないほど違って見える。あるスタジアムでは雨が降り、芝生に水たまりができている。別の会場では金色の紙吹雪が舞っている。かわいい怪物たちが色とりどりのマフラーを巻いて応援している絵もあるだろう。どれが一番上手かを決めるより、それぞれの試合で何が起きたのかを聞く方が楽しい。
いろいろな選手の絵を集めれば、手作りの2026年ワールドカップ選手アルバムも作れる。国ごとにページを分け、旗を描き、選手名を書き、完成したステッカーぬりえを貼っていく。アルゼンチンのページでは、ディブのまわりにボール、グローブ、星、トロフィーを描ける。Dibuという愛称の由来や、自分で考えたスーパーセーブの物語を書き添えてもよい。
そのアルバムは、お店で売られているものと同じでなくてよい。ロボット代表、恐竜代表、雲の上のスタジアムなど、現実にはないチームを加えられる。ドラゴンのシュートを止めたディブには金色のカード、点球の前に一番面白い肩の動きを見せたときには銀色のカード、もっともカラフルなグローブには虹色のカードを作れる。
あとは、この絵の中で生まれたスーパーセーブに名前をつけよう。「星空を飛ぶシュート」「ディブ対ロボットチーム」「魔法のグローブ大作戦」など、聞いただけで続きを知りたくなる名前が似合う。ボールが両手に収まったのか、足で外へはじかれたのか、それともスタジアムの外まで飛んでいったのかも、絵の下に書ける。ディブはゴールの前に立ち、相手選手は助走を始め、机の上では色鉛筆が出番を待っている。最初の一本が紙に触れた瞬間、小さなスタジアムに試合開始の笛が響く。

