
「えっ、そこ通れるの?」とテレビの前の子が思わず声を上げたときには、アクラフ・ハキミ(Achraf Hakimi)はもう右サイドを走り抜けていました。相手の選手がほんの少し内側を向いた、その一瞬だけ現れた細いすき間を見つけて、まるで最初からそこに道があると知っていたようにスッと入り込んだのです。ボールは足元から離れず、追いかける選手の足音だけがだんだん遠くなっていきます。ハキミのすごさは、ただ足が速いことではありません。相手が次に何をしそうか、味方がどこへ走り出すか、ボールがどちらへこぼれそうかをとても早く感じ取っているように見えます。そんなワクワクする瞬間を紙の上で楽しめるのが、2026年ワールドカップのアクラフ・ハキミ サッカーシールぬりえです。印刷して色えんぴつを用意すれば、ユニフォームの色も、スタジアムの景色も、次にどんなプレーが始まるかも、ぜんぶ子どもたちが決められます。
ぬり始める前に、まずは絵の中にかくれている物語を考えてみましょう。ハキミは今、何を見ているのでしょう。ゴール前で手を上げている味方を見つけたのかもしれませんし、相手からボールを取り返したばかりで、すぐに攻撃へ切り替えようとしているのかもしれません。もしかすると、目の前には二人のディフェンダーがいて、どちらも右へ行くと思っているのに、ハキミだけは中央へ切り込むつもりなのかもしれません。このぬりえには答えが一つしかないわけではないので、ボールや相手選手、ゴールキーパー、観客席を自由に描き足せます。試合会場も普通のスタジアムでなくて大丈夫です。海の上に浮かぶピッチでも、雲の上につくられた空中スタジアムでも、夜の街の屋上にある秘密のサッカー場でもかまいません。宇宙の試合ならボールが少し長く浮かび、ゴールキーパーは月の重力で高く跳び上がり、観客席にはロボットや宇宙人が並んでいるかもしれません。
ユニフォームは最初に色をつける場所としてぴったりです。モロッコ代表を思わせる赤と緑を使うと力強い雰囲気になりますし、パリ サンジェルマンをイメージして濃い青や白を選ぶのも楽しそうです。でも、本物のユニフォームと同じにする必要はありません。せっかくのぬりえなので、世界に一着しかないオリジナルユニフォームをつくってみましょう。そでにいなずま模様を描いたり、胸に金色の星を入れたり、ソックスを左右ちがう色にしたりできます。スパイクは銀色や明るい黄色にして、走るたびに光る特別なシューズにしてもおもしろいでしょう。胸のエンブレムには、ライオン、ワシ、翼のついたサッカーボール、ロケットなど、好きなマークを描けます。チーム名も考えてみると遊びが広がります。スピードライオンズ、レッドライトニング、そらとぶスパイク、まちかどチャンピオンズなど、かっこいい名前でも、おもしろい名前でも大丈夫です。色をぬりながら、子どもはいつの間にかユニフォームデザイナーやチーム監督になっています。
アクラフ・ハキミはマドリードで生まれ、子どものころからサッカーを続けてきました。レアル マドリードの育成組織で学んだのは、速く走ることだけではありません。いつ走り出すか、どの方向へ動くか、ボールを受けたあとに何をするかも大切でした。どれだけ足が速くても、まちがった場所へ走ってしまえばチャンスにはなりません。ハキミは相手の立ち位置、味方の動き、ボールの進み方をよく見ながら、道が開く瞬間を見つけます。右サイドの選手が中央へ一歩動き、もう一人がボールだけを見たとき、ライン際に細い道ができます。その道はすぐに消えてしまいますが、ハキミは誰より早く気づいて走り始めます。この特徴を紙の上のゲームに変えてみましょう。ハキミの前に三つのコースを描きます。一つはタッチライン沿い、もう一つは中央へ曲がる道、最後はゴール前の味方へ続く道です。それぞれ違う色にして、どの道がいちばんおもしろいプレーになるか決めてみてください。
コースを決めたら、その周りに登場人物を増やしていきます。タッチライン沿いの道には、必死に追いかけるディフェンダーを描けます。中央へ向かう道では、レフェリーがあわてて横へよけているかもしれません。ゴール前には手を大きく上げてパスを待つ味方を置けます。ハキミの足の後ろに何本か線を描くと、走っている感じが強くなります。スパイクの近くに小さな芝を描けば、力強く地面をけったように見えます。マンガのような絵が好きなら、星や光、カラフルなスピード線を加えても楽しいです。笑える場面にしたいなら、ゴールキーパーに大きすぎるグローブをつけたり、マスコットがまちがってピッチに入ってきたり、相手選手がハキミに抜かれる直前に靴ひもを結び直していたりしてもよいでしょう。何かを一つ描き足すたびに、試合の物語が少しずつ動き出します。
ハキミとモロッコのつながりも、このぬりえをもっとにぎやかにしてくれます。スペインで生まれたハキミは、家族のルーツがあるモロッコの代表としてプレーする道を選びました。モロッコの試合では、赤い旗や緑の星、マフラーを持ったサポーターがスタンドをいっぱいにします。そんな景色を背景に描いてみると、2026年ワールドカップらしい一枚になります。家族みんなで応援している様子や、ほっぺに緑の星を描いた子、太鼓をたたいている人、大きな旗をふっている人を加えてみましょう。モロッコ代表はアトラスのライオンと呼ばれることがあるので、絵のすみにかわいいライオンのマスコットを置くのもおすすめです。こわい顔ではなく、少し大きすぎるユニフォームを着て、左右ちがう色のソックスをはき、ボールを抱えながら監督のまねをしているライオンなら、見ているだけで楽しくなります。手に持ったボードには、ハキミへの応援メッセージを書いてもよいでしょう。
モロッコが2022年のワールドカップで準決勝まで進んだ出来事は、多くのサッカーファンの記憶に残りました。ハキミはそのチームの中心選手の一人として、守備に戻ったり、前へ飛び出したり、何度も長い距離を走りました。その物語をきっかけに、家で2026年ワールドカップの手作りアルバムをつくるのも楽しそうです。高価なアルバムは必要ありません。ノート、印刷したぬりえ、のり、はさみ、色えんぴつがあれば始められます。一ページずつ国や選手を分けて、モロッコのページにはアクラフ・ハキミのシールぬりえを貼ります。その周りに国旗、ボール、スタジアム、好きなスコアを描いてください。さらに、選手の特別な力を考えて書き加えることもできます。ライトニングスタート、ライオンハート、ひみつのクロス、スーパーリターンなど、ゲームのような名前をつけると楽しくなります。数字は本当のデータでなくてもよく、自分でつくったサッカー世界の能力として自由に決められます。
パリ サンジェルマンでプレーするハキミは、短い時間のあいだにピッチの遠く離れた場所へ移動することがあります。さっきまで自分のゴール近くで守っていたのに、気づけば相手のペナルティーエリア近くまで上がっています。まるでグラウンドが急に小さくなったようです。この特徴を使って、同じぬりえを二枚印刷する遊びもできます。一枚目では守備をするハキミを描きます。相手がボールを運び、後ろではゴールキーパーが構え、ハキミがボールを取り返そうと近づいている場面です。二枚目では攻撃するハキミを描きます。前にはパスを待つ味方がいて、相手のディフェンダーは少し遅れています。二つの場面は天気も変えてみましょう。守備の場面は雨で、ピッチに小さな水たまりがあり、空には灰色の雲が広がっています。攻撃の場面は夜で、照明が明るく、観客席から紙吹雪が舞っています。同じ人物でも、色と背景を変えるだけでまったく別の物語になります。
家族や友だちの一人が実況アナウンサーになると、ぬりえはさらに盛り上がります。子どもが色をぬっている横で、「ハキミが右サイドでボールを受けました。二人の相手が近づいてきます。前にはほんの少ししか道がありません」と話します。その次を決めるのは、えんぴつを持っている子です。中央へ向かう矢印を描けば、ハキミは方向を変えます。ゴール前に味方を描けば、パスのチャンスが生まれます。空中にボールを描けば、クロスの場面になります。最初は本物らしい試合でも、少しずつおかしな試合に変えてかまいません。相手チームがロボットで、ゴールキーパーが八本の手にグローブをつけたタコ、レフェリーがハキミに追いつけないのでキックボードに乗っている、そんな展開でも楽しいでしょう。観客席にはネコ、サル、ゾウ、オウムが並び、みんな別々のユニフォームを着て応援しています。
このぬりえには、いろいろな画材を使えます。色えんぴつは顔、髪、スパイク、ユニフォームの細かい部分に向いています。クレヨンは芝生、空、観客席のような大きい場所をぬるときに便利です。カラーペンを使えば、背番号や旗、シールのふちがはっきりします。絵の具が好きな子は、少し厚めの紙に印刷し、水彩絵の具や子ども用のポスターカラーで背景を描いてみましょう。芝生は一色の緑だけでなく、明るい緑、深い緑、黄色に近い緑を混ぜると豊かに見えます。夕方の試合ならオレンジ、ピンク、むらさきを使い、夜の試合なら濃い青の空に黄色い照明を加えます。画材を組み合わせてもきれいです。ハキミは色えんぴつでぬり、空は絵の具で描き、観客はカラーペンの小さな点をたくさん並べて表せます。
色が線からはみ出しても、失敗だと思わなくて大丈夫です。長く伸びた線はスタジアムの照明に変えられます。スパイクの近くの緑色のしみは、走ったときに飛び上がった芝になります。赤と青がまざった場所は、ユニフォームの新しい模様にできます。ぬりえはテストではないので、正しい答えは一つではありません。思っていなかった線から、おもしろいアイデアが生まれることもあります。曲がった線は旗のポールになり、丸い色のしみは遠くのボールになり、何もないすみには大きなカメラを持ったカメラマンを描けます。一人はモロッコ代表らしい色でハキミをぬり、別の子は光るスパイクといなずまスーツを着たサッカーヒーローにするかもしれません。どちらも、その子だけの大切な作品です。
色をぬり終えたら、大人に手伝ってもらいながら絵を切り取り、厚紙に貼るとオリジナルの選手カードになります。裏にはスピード、パス、守備、シュートの点数を書けます。さらに、特別な技の名前をつけてみましょう。とうめいダッシュは二人の相手を一気に抜ける技、まほうのクロスは味方の足元へ正確にボールを届ける技、いなずまリターンは相手が攻撃する前に守備へ戻れる技です。ほかの選手カードもつくれば、机の上でサッカーゲームを始められます。さいころでチームが進む数を決め、コインでどちらがキックオフするか決め、カードの力でプレーの結果を変えます。ルールはずっと同じでなくてもかまいません。もっとおもしろい遊び方を思いついたら、みんなで相談して新しいルールに変えてください。
サッカーがテーマの誕生日会にも、このアクラフ・ハキミの印刷できるぬりえはよく合います。机に何枚かの印刷用紙、色えんぴつ、クレヨン、カラーペン、シール、色紙を置いて、みんなで違うハキミをつくります。モロッコの色を使う子、パリのチームをイメージする子、どこにもない新しいクラブをつくる子がいるでしょう。完成した作品を壁に並べると、同じ線画からたくさんの世界が生まれたことが分かります。一つの試合は大都会の中で開かれ、別の試合は海の底、その次は雪山の頂上です。雨の中を走るハキミもいれば、ロボットのディフェンダーを抜くハキミ、スパイクの後ろに星を残しながら走るハキミもいます。どの絵も同じである必要はありません。
マンガを描くことが好きな子は、メインの絵の周りに小さなコマをつくって続きを描けます。一コマ目でハキミが空いている道を見つけ、二コマ目で走り出し、三コマ目でボールがゴール前へ飛び、四コマ目で選手とサポーターが喜びます。ふきだしには選手の声、実況のことば、ライオンのマスコットの冗談を書けます。まだ物語を続けたいときは、次のページに新しい選手、スタジアム、相手チームを描きましょう。次の相手は一分ごとにユニフォームの色が変わるかもしれません。ゴールが空中に浮かび、キーパーがトランポリンでジャンプしなければ届かない試合になるかもしれません。一枚のハキミぬりえが、長いサッカーマンガの最初のページになります。
ハキミのスピードはとても目立ちますが、その走りの前にはしっかりした観察があります。ボール、味方、相手をほとんど同時に見て、短い時間で道を選びます。ぬりえをする子は、ハキミのように急ぐ必要はありません。顔やユニフォームの小さな場所はゆっくりぬり、芝生や空は大きな動きで色をつけ、背景は次の日に続けてもよいでしょう。途中でアイデアを変えても大丈夫です。最初は赤くする予定だったユニフォームに金色の模様を加えたり、普通のスタジアムを空飛ぶカメラと光るゴールのある不思議な競技場に変えたりできます。決めたことを一つずつ加えるたびに、絵はその子らしい作品になります。
ハキミを全部ぬり終えたら、紙に残った空いている場所をもう一度見てみましょう。上にはスコアボード、タッチラインの近くにはカメラマン、ゴールの後ろにはハキミの名前を書いた大きな応援幕を描けます。空には風船、紙飛行機、カラフルなリボンを飛ばしても楽しいです。紙のほとんどを絵でいっぱいにする子もいれば、ハキミが目立つように白い場所を残す子もいます。どちらもすてきです。そして紙の中の試合では、相手の選手がほんの一秒だけボールに目を向けました。右サイドに細い道が開きます。アクラフ・ハキミ(Achraf Hakimi)はもうそれに気づいています。次の色が紙に触れた瞬間、新しいダッシュが始まります。

